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ジョルジュ・ルオー―内なる光を求めて
2024年9月6日(金)~11月4日(月・休)
月曜休館 ※9月16日(月・祝)、9月23日(月・休)、10月14日(月・祝)、11月4日(月・休)は開館
展覧会概要
20世紀を代表するフランスの画家、ジョルジュ・ルオー(1871-1958)。 輝かしい色彩と重厚なマティエールをもつ独特の作品は、国や時代、信仰の違いを越えて多くの人々を魅了してきました。社会の矛盾や悲惨な戦争からの救済をキリストへの信仰の中に見出したルオーが描いた崇高で深遠なる世界を、出光コレクションを代表する連作油彩画《受難》と銅版画集『ミセレーレ』を中心とする作品を通してご堪能ください。
第1章 初期の油彩画
ステンドグラス工房で修業を積んでいたルオーは、1890年、画家を志してエコール・デ・ボザール(国立美術学校)に入学し、ギュスターヴ・モロー教室においてマチスらとともに学びました。
恩師モローの死を経た1900年代初頭頃からは、それまでの宗教画や神話画にかわる独自のテーマを追求しはじめます。とりあげたのはサーカスの「道化師」など、自身の隣人たちの苦しい日常の姿でした。また、黒く太い輪郭線や暗いなかにも透明感のある色調といった独自の画風もこの頃に確立しました。一方、自身の深い信仰心を反映し、「キリストの受難」のテーマもすでに取り上げています。
第2章 中期の油彩画
銅版画集『ミセレーレ』制作を開始する1920年頃から、連作油彩画《受難》にとりかかる1934年頃までが、ルオーの画業の中期と考えられます。
『ミセレーレ』に取り組んだルオーは、その過程でスクレイパー(絵の具を削り取る道具)の技術とその効果に目覚め、それを油彩画にも応用します。一度塗った色を薄く削っては色を塗り重ねることを繰り返すこの技法により、薄片のような色層の重なりある独特のマティエールと、混ざり合いながらも透明感を保った輝かしい色彩を兼ね備えた独特の画風が誕生しました。依然としてサーカスのテーマも描かれますが、宗教的なテーマが次第に多くなっていきます。
第3章 後期の油彩画
《受難》の完成から最晩年までがルオーの画業にとっての後期です。スクレイパー技法の放棄とオート・パート技法の採用により、絵の具を厚く塗り重ねた新たなマティエールが成立しました。しかも、厚塗りのマティエールの追求は年を追うごとに積極的かつ表現主義的な様相を呈するようになり、晩年には溶岩を思わせるような独特の表現となります。一方、色彩は明るい青、緑、黄、赤などを基調とし、画面に鮮やかさが加わるようになっていきました。主題は中期の傾向を引き継ぎますが、キリストの「受難」に関するものが多くなります。また、《聖書の風景》や《伝説の風景》といった静謐な宗教的風景画も描かれるようになりました。
第4章 油彩画の代表作 -連作油彩画《受難》
アンドレ・シュアレスの詩集『受難』用の挿絵原画を油彩画に仕上げた作品が連作油彩画《受難》です。中期の試行錯誤期に、『ミセレーレ』と並行して制作されたこれら82点の原画を見た画商ヴォラールは、ほぼ一年という短期間の内にすべてを油彩で仕上げるようルオーに依頼しました。このため、時間のかかるスクレイパー技法を放棄せざるをえず、やむを得ず採用したのがオート・パート(絵の具の盛り上げ技法)技法です。絵の具の塗り重ねではそれまでのような透明感は失われるものの、色彩の豊かさでは相似た効果が期待できます。また、分厚く盛り上がった絵の具層の出現はルオーに新たな興味深いマティエールを提供しました。オート・パートの採用によって生み出された《受難》は後期油彩画の出発点であり、その代表作です。